スヨルト 草原の料理(神楽坂 矢来町 内モンゴル料理)

矢来町と言えば神楽坂の中心からかなり奥まった地区にある閑静で高級な住宅街が広がるエリアですが、「スヨルト 草原の料理」は矢来町の住宅街の中ではなく表通り沿いにあります。新潮社のある(昔はアディダスの日本支社もあった)通りと言えば人によってはわかるかもですし、昔からのビストロ好きなら「ブラッスリー・グー」の隣と言えばすぐにわかるかもしれません。

近年神楽坂、それも特に神楽坂下から神楽坂上に至る周辺エリアはチェーン店や大手資本、お金の臭いに敏感なお店、ただ歴史が長いだけのお店、そして店舗物件も一部の不動産屋に占拠され高くつり上げられた状態となっており魅力のあるお店を探すのが難しくなってきています(もちろんそんな中でも過去にブログにも登場しているようにお気に入りの素晴らしいお店もたくさんありますが)。

他の注目エリアが地価高騰の中でも次から次へと魅力的なお店が増えているのと比較すると、もしかすると地元の昔からの老舗や商店の人たちが街を発展させていく気持ちや外部の人たちを広く受け入れ巻き込んでいく意欲や人間力にとぼしいのかもしれません。大規模開発でもない限りそこにいる人が街を作るのですから。

私は神楽坂で生まれ育っているわけではありませんから色々言う資格はありませんし、たまたま住むことになっただけで神楽坂にそこまでの思い入れはありませんが、だからこそ客観的にわかることもありますし、もっと良い意味での発展をしてほしいという外野からの発言です。

そんな状態の中で以前なら注目もされていなかった奥神楽坂エリアや江戸川橋エリアのほうが最近ははるかに新しい風や人を引き付ける魅力的なエリアになりつつあります。今回のお店もそんなエリアにあたります。

前置きが長くなってしまいました。

それでは入店しましょう。

1階はカウンター席で2階以上がテーブル席になっています。

私たちは2階へ。

こちらのお店は以前は味坊にいらしたスヨリトさんが独立して開いた中国の内モンゴル自治区の料理店です。モンゴルと言えばやはり羊肉ですよね。はるか昔から羊と共に暮らしてきた民族に伝わってきた羊のあらゆる部位を無駄にすることなく提供する料理と聞くだけでワクワクします。

本当は羊まるごと1匹の料理を予約して食べられると最高ですが、それには多くの人を集めないといけないですし今回は夫婦2人で食べられそうな、かつ魅力のあるものを注文してみましょう。

まずはメニューを眺めます。気になるものが多すぎて絞り込むのが難しいですね。なかにはラムの「ちん〇ん」「きん〇ま」なんてのもありますが無駄に精力をつけても仕方ないのでこれはまたの機会でいいかな。そういえば那覇の「さかえ」で山羊のそれなら食べたことありますが(ちなみに「さかえ」はいろんな意味でディープなお店なので人には勧めづらいです 笑)。

しばらくにらめっこしてやっとのことで注文です。

炭火焼きはせめて塊とはいかないまでも何か食べたいなあということでラム脚(ふくらはぎ)の一本焼きを。水餃子(バンシ)や焼き餃子は餡の部分を選ぶことができます。それぞれセロリとパクチーにしました。あと箸休め的にあっさりめのものも欲しくエリンギの炭火焼も。ラムの胃袋で包んだ肉団子も気になります。これぐらい注文すれば十分でしょうか。本当はシュウマイも食べたいですがそこまでいくと食べ過ぎになりそうです。

お酒は最初はサッポロの赤星で喉を潤します。

最初にやってきたのはお通しのラムショルダーの串焼きです。お通しというと断りたくなるようなものが来ることもありますが、これはお通しというか必食でしょうと思います。この串焼きに関してはタマリスク(紅柳)を串に使っているという凝りよう。シルクロードの他の地区でもこの串を使った羊料理があったような。。。

続いてエリンギの串焼き。これは別に内モンゴル料理というわけではありませんが全部羊ばかりというのもなんなので。

ビールの次はボトルワインにしましょう。こちらのワインは2軒となりのワインショップJAJAのものでここにある他にワインショップで買ったものを持ち込むこともできます(持ち込み料金1500円)。ケースの中にあるワインもおおむね市価と1500~2000円程度の差額しかないので、ここではボトルワインは結構お得に楽しめますね。

色々悩んだのですがドイツのビオロジック栽培のワインである「ヴァインライヒ・ロゼ」にしました。飲み始めは果実味があふれる感じですが途中から比較的ドライな印象でバランスの良い印象でした。この日の料理たちとの相性も悪くなかったです。こちらでボトル3700円でした。

最近いわゆるナチュールワインを飲むことが多いですが、特に意識をして飲んでいるわけではなくそれだけそういうワインを出すお店が増えているということかなあと思っています。ナチュールワイン自体は10年以上前にも流行がありましたし、その頃から普通に飲んではいましたので。個人的には昔ながらの?タイプも大好きですが最近平凡なサラリーマンにはボルドーやブルゴーニュの上級なワインには気軽には手が届かなくなってきました。

さてラム脚の一本焼きがやってきました。これは美味しそうですねえ。思ったよりボリュームもあります。一度この状態で持ってきて、そこからお店の人が食べやすいように切ってくれます。

ミックススパイスをかけていただきましょう。焼き方自体が普通のお店とは違うのでしょうか、羊肉の肉自体の旨味がすごいですね。それでいて変な臭みとかもなく食べやすいです。

焼き餃子。注文してから皮を包むので結構時間がかかりますがその分だけ餡も肉肉しくジューシーで美味しいですね。やはり作りたてにかぎりますね。

ラムの胃袋で包んだ肉団子。肉団子というか胃袋そのものにしか見えませんw 

見た目はグロテスクですが、半分に切ってみるとこのようにジューシーなお肉が。見たところ肉を荒切りしたした感じなので肉そのものの旨さがスポイルされていません。これは餃子類についても同様です。

水餃子はコラーゲンスープで食べるタイプにしてみました。このスープも羊でとっていると思うのですがどうしたらこんなスープになるのでしょう。しかも割と優しい味でもちろん肌にも良さそうです。

まずはそのままでいただきます。濃厚な見た目なのにむしろあっさりしていると言ってもいい感じです。シンプルなので水餃子自体の味もよく伝わります。

こういった餃子料理って中央アジアの各地で見られますがそれぞれの文化は違うものの陸続きなんだなあと感じさせますね。ネパールにもありますしジョージアに行った時のヒンカリなんかもそうですね。あちらはモンゴル料理のボーズに近い感じですけども(下のリンクの記事にヒンカリが登場します)。

2つ目以降はいろいろ加えてみて。味変的でこれもまた美味しいですね。

まだまだ他の料理への興味も尽きず、何度か通って色々と食べてみたいですね。

あと美味しいのはもちろんなのですが、何というか旅好きとしては中央アジアの風景が思い浮かぶようなロマンを感じる料理でした。